地磁気観測所は兵庫県南部地震後の平成8年から平成13年まで、この地震の震源となった野島断層が位置する淡路島北部から中部地域において、地電流・全磁力・地磁気3成分の高密度観測を実施しました。この成果をまとめた「活断層における地震予知技術開発のための地電流等観測報告書」がこの度完成し、各関係機関等に配布いたしました。
兵庫県南部地震では、その深刻な被害により、地震予知に対する期待が改めて浮き彫りになりましたが、特にギリシャでの成功が伝えられたVAN法等の地震予知への可能性が社会的にも関心を集めました。地球電磁気学的手法による地震予知については、これまでも様々な観測・研究が実施されてきましたが、日本では人工的なノイズが桁違いに大きいこともあり、未だに実用化の域には達していません。VAN法には、その原理、評価方法等を巡り様々な疑問が寄せられていましたが、当所ではこれを一つの契機に、地球電磁気学的手法による地震予知のための新しい取掛りにしたいと考えました。
さて、兵庫県南部地震の発生後暫くは比較的大きい余震活動が予想されました。そこで、この震源域に高密度な観測網を整備し、余震活動に伴う地電流・地磁気の変化をその発生域で捕捉することを期待し、特にノイズ除去についてはこれまでの研究成果を結集し、様々な解析手法を用意して努力をしたのがこの観測です。残念ながらこの5年間の観測では明確に地震活動と関連した変化をとらえることは出来ませんでしたが、ここで開発された解析手法は今後の研究の重要な基礎になるものと考えます。
「地磁気観測所ニュース第2号(2002年4月)より」
1.1 はじめに
1.2 VAN法について
1.3 淡路島における地電流等観測
1.4 観測施設
1.4.1 観測点の配置
1.4.2 観測システム
1.5 観測データ
1.5.1 データフォーマット
1.5.2 観測データ例
参考文献(第1章)
2.1 ノイズの特徴
2.1.1 時間変化の特徴
2.1.2 空間分布の特徴
2.2 ノイズ除去手法 [PDFファイル 1.2MB]
2.2.1 デジタルフィルター
2.2.2 主成分分析法を用いたノイズ除去
参考文献(第2章)
3.1 BAYTAP-G
3.1.1 はじめに
3.1.2 BAYTAP-Gの有効性
3.1.3 解析結果と地震との関連性
3.2 全磁力 [PDFファイル 4.6MB]
3.2.1 はじめに
3.2.2 淡路島における全磁力観測の目的と概要
3.2.3 観測結果
3.2.4 解析
3.2.5 地震活動に伴う全磁力変化検出の試み
3.2.6 まとめ
3.3 地磁気変換関数 [PDFファイル 3.8MB]
3.4 鳥取県西部地震,芸予地震に伴う電磁気変動
3.4.1 鳥取県西部地震
3.4.2 芸予地震
参考文献(第3章)
※引用を行う際は適切な方法により、必ず出所名を明示してください。