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研究代表者:山崎 明
活動的な火山ではマグマの上昇や熱水系の発達などにより、岩石の磁化が弱まり地磁気が変化する、あるいは比抵抗が下がるなどさまざまな地球電磁気的な変化が発生します。地磁気観測所では主に全磁力観測による火山活動の評価手法の研究に取り組んでいますが、ここでは平成30年に噴火した本白根山で実施した自然電位観測について紹介します。
平成30年1月23日に草津白根山の本白根山で噴火が発生しました。本白根山の噴火は約3000年前のマグマ噴火は知られていますが、有史以降は噴火の記録がありませんでした。地磁気観測所では、噴火後の本白根山地下浅部の熱活動の状況を調査するため、平成30年6月から7月にかけて自然電位観測を実施しました。 地面の電位はどこでも等しいわけではなく、場所によって数百mV程度の電位差があります。この電位は、地磁気の変化に伴う誘導電流や電気設備からの漏洩電流などに起因するもののほか、自然電位と呼ばれる電位も存在します。自然電位が生じる主な原因は地下水の流れによるもので、地下水が岩石の空隙を流れる際に、正(+)の電荷を運ぶことにより生じるものと考えられています。自然電位を山地で測定すると、標高差による地下水の流れにより、山頂部で電位が低く山麓部で電位が高くなるような傾向が一般的にみられます。こうした傾向に加え、火山においては、火山活動による地下の熱源で生じる熱水対流により正(+)の電荷を持つイオンが上向きに運ばれることで、逆に山頂部で高電位の領域が形成されることがあります。すなわち、火山活動域に対応した特徴的な自然電位の分布を調べることで、地下の熱水活動を推し量れる可能性があり、自然電位観測はこれまでにも様々な火山で実施され、火山地下浅部の熱水対流との関連について研究されています。 今回の観測は、本白根山山頂周辺部の約130点で行いました。観測に使用した電極は非分極性の銅・硫酸銅電極で、およそ50m間隔で測定しました。地形効果補正後の測定結果を図1に示します。この電位分布は、A15と記した北西端の測定点(図中左上)を電位の基準(0mV)とした各測定点の相対電位を示しています。観測の結果、2018年1月の噴火で噴火口ができた鏡池の西〜南西側や、鏡池北火砕丘の周辺で高い電位を示すことがわかりました。こうした局所的に電位の高い領域は、山体上部への熱水の流れが周囲よりも卓越している可能性が考えられます。
図1 本白根山での自然電位観測結果(地形効果の補正後)