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研究代表者:山崎 明
活動的な火山ではマグマの上昇や熱水系の発達などにより、岩石の磁化が弱まり地磁気が変化する、あるいは比抵抗が下がるなどさまざまな地球電磁気的な変化が発生します。地磁気観測所では主に全磁力観測による火山活動の評価手法の研究に取り組んでいますが、ここでは地磁気三成分磁力計を利用した外部磁場擾乱の補正方法について紹介します。
火山活動に伴う全磁力変化を検出するため火口周辺に全磁力計を設置しますが、磁気嵐などの外部磁場擾乱の影響を取り除くため、通常火山活動の影響を受けない山麓部に参照点を設置します。外部磁場擾乱は地球規模の広域的現象であるため数十km程度の範囲ではほぼ同じ磁場変化をするとみなすことができるので、山上観測点の全磁力と参照点の全磁力の差(単純差)をとることにより、火山活動に伴う全磁力変化を抽出することができます。 しかしながら、厳密には火山では観測点ごとに地磁気の向きが数度程度異なっているため、単純差の方法では外部磁場擾乱の影響が多少残ってしまいます。これはDI効果と呼ばれており、数nT程度の微弱な火山性の磁場変化を検出する上での障害となります。このDI効果を除去するため、参照点に三成分の磁力計を設置し、そのデータを用いてDI効果を補正する手法があり、DI補正と呼ばれています。 図1に樽前山での全磁力観測にDI補正を適用した事例を示します。図1をみると補正前(単純差)と補正後では外部磁場擾乱に伴う数日から一週間程度の周期の磁場変化が明瞭に小さくなっており、火山性磁場変化の検出の精度が向上していることがわかります。
図1 樽前山におけるDI補正前と補正後の全磁力日平均値差(山上観測点−参照点)