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平成29年度調査研究のトピックス(2)

地磁気絶対観測の自動計測試作器の試験及び評価

研究代表者:大和田 毅

地磁気観測は、ある時刻の地磁気の絶対値を観測する絶対観測と、連続的に地磁気の変化を観測する変化観測から成ります。変化観測はフラックスゲート磁力計などで行いますが、温度変化や検出器の傾斜変動などの影響を受けるため、定期的に絶対観測を行い、求められた絶対値を用いて変化観測値の校正を行う必要があります。
 地磁気観測所(柿岡)の絶対観測の精度は世界的にも高く評価されていますが、自動化されている変化観測と異なり、絶対観測は週に1回の頻度でDI-72型角度測定器(以後DI-72)を手動で操作して行っています。この絶対観測の自動計測化に向け、気象庁とRMI(ベルギー王立気象研究所)の相互協力により、地磁気観測所構内においてRMIが開発しているAutoDIF(写真)の試験観測を2016年5月から2017年12月まで行いました。また、2017年9月からはAutoDIFとDI-72の観測値の変動の相違が、観測場所の違いによるものなのかを確認するため、AutoDIFの観測室内で可搬型のFT型磁気儀*(以後FT)を用いた絶対観測も行なっています。
 AutoDIF、DI-72及びFTのそれぞれの観測値から求めた変化観測値の基線値(校正値)を図に示します(偏角成分)。試験期間中、変化観測に用いているフラックスゲート磁力計の温度変化や検出器の傾斜変動では説明できない変動や相違が見られます。また、冬季にレーザー光線を用いた方位標(屋外)の測定に失敗することが多く、霧や空気層の揺らぎ等が影響していると考えられます。観測値のバラツキ、動作の安定性において実用化にはまだ多くの課題がありますが、自動化が実現すれば、絶対観測の高頻度化や無人観測点への展開などによって地磁気データの質の向上が期待できます。

*FT型磁気儀: 非磁性の経緯儀に1成分フラックスゲート磁力計センサーを搭載した角度測定器。AutoDIFはFTの手動操作による観測手順を基本に自動化されている。


写真

写真  AutoDIF 検出部


図

図 AutoDIF、DI-72及びFTの絶対観測値から求めた変化観測値の基線値(校正値)

図